調査リリース その3 - 調査とイベントを連動させ戦略的に商品をPR

調査リリースを最大限に活用して、商品のPRにつなげた例がある。

医薬品メーカーのエーザイの花粉対策商品「クリスタルヴェール」のリリースだ。本商品は鼻の周りにジェルを塗り、イオンの力で花粉の侵入を防ぐというもの。薬のデメリットである、眠くなる副作用や、マスクをつかわなくてよいというメリットがある商品である。

ただ、本商品は薬やマスクとちがい、消費者にとって慣れ親しんだ商品ではないため、なぜ効果があるのか、どんなメリットがあるのかをしっかりと伝える必要があった。そのため、テレビCMなどのマス広告で商品の認知をあげる前に、商品が受け入れられる土壌をつくる必要があった。

そこで、実施したのが「マスクに関する意識調査」を掲載した調査リリースである。

「マスクをすることをどう感じるか」「マスクをしている人の印象」を調査し、メディアに配信。その結果、「マスクはできるだけしたくない」という調査結果が多くのネットメディアに取り上げられた。

このように「マスクを使用したくない消費者が多い」という事実を広め、クリスタルヴェールの商品が受け入れられる土壌を作り、その上で調査結果を基にしたタレントのトークショーを実施し、タレントが「合コンでマスクをした人の印象など」調査結果に対する感想を交えながら、商品のPRへと結びつけた。

その結果、テレビではイベントとともに、商品とその特性がしっかりと紹介され、その後、満を持してテレビCMが開始された。

(調査リリース配信→ネットメディアでの掲載→タレントトークショーイベントの実施→テレビCMの開始)

調査リリースによって、本商品が必要であるという土壌をしっかりと固め、それを軸にしてイベント、テレビCMの効果を最大限に発揮させ、商品売上の向上へと戦略的に結び付けていった事例といえる。

調査リリース その2 - 調査内容の選定

調査リリースと一言に言っても、さまざまなものが調査内容としてあげられる。

まず、調査リリースの目的の一つとして、PRというものがある以上、話題性のある調査であることが前提となる。しかしながら、調査リリースの目的は話題を提供することだけではない。大前提としての、商品・サービス、企業ブランドの向上という目的がある。

たとえば、「~そうな芸能人ランキング」という調査を実施し、調査リリースとして配信したとする。話題を喚起しそうな調査ではあるが、一部のスポーツ紙などのメディアに取り上げられたとしても、調査の実施企業として小さく記載されるだけで、調査内容が企業や商品と結びつき、商品の売り上げや企業ブランドの向上につながることは難しそうだ。

つまり、調査リリースの配信において注視すべきは、話題性はもちろんのこと、「調査内容と商品や企業との結び付きの強さ」といえる。

また、「話題性」について少し触れたが、消費者の注意を喚起し「話題」となるには、消費者目線のリリースが効果的だ。

例えば、出産や結婚、芸能人、仕事など、消費者の日常生活と結びついたものは紹介されやすい傾向がある。

調査リリースの配信は、単に調査を実施し、リリースを流すだけでなく、誰に、どんなリリースを、どのようにPRと結びつけて配信したいのか、を戦略立てて配信して始めて、本来の目的の商品・企業ブランドの向上という結果に結びつくといえる。

調査リリース その1 -戦略PRとしての調査リリース

メディアに取り上げられることで、商品の売り上げや企業のブランド価値を向上させる環境づくりを「戦略PR」呼ぶことがある。

この戦略PRの手法として注目を集めるのが、調査データを用いた「調査リリース」。企業がこぞって掲載を狙う圧倒的アクセス数を誇る「ヤフートピックス」でも、この調査リリースが散見される。

メディアといってもさまざまなメディアがあるが、テレビよりも取り上げられやすく、かつ現在ではfacebookやtwitterといったSNSで波及効果も期待できるネットメディアへの掲載を狙った調査リリースも多い。

また、他の新商品の発表や、テレビCMの投入のタイミングとの調整もしやすいため、計画的に消費者に対して商品やサービスをPRできるのもネットメディアの強みと言える。

このような高いプロモーション効果の期待できる「調査リリース」を作成するにあたって、どのようなことを注意すればよいか、次回から1つづつ確認していきたい。